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十一面観音巡りの旅(9)秋の大和路 [2013秋の奈良(法華寺・秋篠寺・法隆寺他)]

 今日は斑鳩の里を歩きました。降ったりやんだりでしたが、傘の手放せない雨の一日でした。斑鳩の法隆寺まではJRで、法隆寺駅前からはバスで門前まで。法隆寺は高校の修学旅行以来ですから、なんと!53年ぶり・・・。当然、何も覚えていませんでした。かろうじて観音様を古い木造のお堂で観たのはおぼろげに・・・ガラスで覆われることも柵にさえぎられることもなく、目の前で鑑賞できたことは、今回ここを訪れてみて、あれは貴重な体験だったのだと痛感。セーラー服の可憐な?(というよりおバカな 笑)17歳、セピア色の思い出です。

☆法隆寺 

 斑鳩の里にある「法隆寺」は飛鳥時代の姿を現在に伝える世界最古の木造建築として知られ、1993年に日本で初めてユネスコの世界遺産に登録されました。607年の創建には聖徳太子がかかわっていたと伝えられています。世界最古の建築群である七堂伽藍のすべてが、国宝に指定されており、そのうえ寺院に納められている仏像・仏具の殆どが、飛鳥・白鳳・天平時代の作という、文化財の比類なき宝庫のような寺院です。

↓ 法隆寺の玄関、南大門(室町時代)から入ります

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↓中門(金剛力士像)

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↓廻廊の外から見えた五重塔

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↓五重塔の相輪

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↓廻廊から。手前に金堂と五重塔

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↓金堂の柱に絡む龍

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 金堂には本尊として聖徳太子のために造られた金銅釈迦三尊像が中の間に安置されています。中央の座するお釈迦様の台座の裾が華やかに翻っているのが飛鳥時代の特徴とか。面長なお顔にアルカイックスマイル、光背の淵には13個の孔があけられていて、そこに風に舞う飛天が取りつけられていたようです。

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 当然カメラ禁止ですが、室外からの見学なので近くでは鑑賞できません。そのうえ見物客も多く、押されるような姿勢で観なければなりません。天蓋まで鑑賞する余裕がなかったのですが、ここにも私の大好きな奏楽の天女(透かし彫り)があったようなので、次回の宿題にいたしましょう。壁画は昭和24年の火災のため焼失したのでパネルに再現されています。

 ↓ 法隆寺でいただいたご朱印がその奏楽の天女(透かし彫り)のようです。

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 五重塔は1300年の時を越え、日本最古の塔として聳えたっています。初層内部には塑像群が配置されています。中央に須弥山が造られ、その周囲の涅槃像土(北面)は最も迫力があります。仏陀を失った悲しみの比丘たちの造形は他の慈悲をたたえた仏像とは全く違って、驚きました。(天平時代、国宝)

↓ 聖霊院には聖徳太子坐像(平安末期、国宝)が安置されています。

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 聖霊院の裏側に大宝蔵院(平成10年)があり、世界的に有名な百済観音像(飛鳥時代)をはじめ夢違観音像(白鳳時代)玉虫厨子などを観ることができます。

百済観音の八等身のお姿は法隆寺の名だたる仏像の中でも群を抜いた存在感です。和辻哲郎や亀井勝一郎が絶賛するだけはあります。ただロマネスクの彫刻などでも感じますが、出来れば古いお堂の中で、ゆらめく蝋燭の灯りや供えられた花々の陰で観たかったです。

↓百済観音像(飛鳥時代、国宝)画像はNETから拝借しました。

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そして、夢殿へ向かいました。↓途中にある東大門が見えてきました

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↓ 夢殿

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 739年に聖徳太子の遺徳を偲んで建てた伽藍の中心がこの夢殿です。八角円堂の中心の厨子に聖徳太子等身の秘仏救世観音が安置されています。夢殿本尊特別開扉(春と秋)の時期でした。1884年にフェノロサによって厨子が開扉されるまで1000年の間、秘仏だったそうです。そういう伝承からのイメージや聖徳太子没後の一族の悲劇もあり、神秘的な妖気さえ漂うそのお姿にただ溜息・・・するとお隣で観ていた老婦人が「こちらからのほうが良く見えますよ」と場所を譲ってくれました。関西の方でしょうか、特別公開の時期には必ず訪れるそうです。ご親切に感謝でした。

あめつちに われひとりゐて たつごとき
このさびしさを きみはほほゑむ   會津八一

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そして、夢殿から中宮寺へ移動。

☆中宮寺

↓庭園に咲くモチノキ

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 中宮寺では「弥勒菩薩半跏思惟像」(飛鳥時代)を観ました。安置されている本堂は昭和43年築で池にかかる短い通路と階段を上っていきます。 写真を撮り忘れたのでNETから拝借。池にはカメさんたち。

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↓菩薩半跏像(絵葉書)

270px-Bodhisattva_Chuguji.jpg  中宮寺菩薩半跏像.jpeg

「考える像」として有名な菩薩様は優しく微笑んだお顔、頬に触れる優雅な指先、半跏の姿勢も上品で、完璧な美を備えています。お堂は新しいけれど、おそば近くまでにじり寄り、膝を折りお参りしつつ見上げる目の先の菩薩様。造られた当時は鮮やかに彩色されていたそうですが、黒く光っているのは素地を固めるために塗った漆の色だそうです。千三百余年の昔から祈りの中に佇まれ、徐々に退色、黒いマリア様ならぬ菩薩様の姿になられたのですね。

↓菩薩半跏像の左には国宝の「天寿国曼荼羅繍帳」のコピーが飾られていました。聖徳太子が崩御された後に妃の橘大郎女が作らせたと言われています。

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↓ お堂の入り口にあった歌碑

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みほとけの あごとひぢとにあまでらの
あさのひかりの ともしきろかも  會津八一

 場所が境内のどの辺だったか、記憶が薄れていますが「法隆寺秘宝展」も開催されていました。ここで魅かれたのが同じ斑鳩の里にある法起寺の寺宝「銅造菩薩立像」(飛鳥時代白鳳期)↓は絵葉書です。時間と体力を考えて法起寺には寄らないつもりだったのですが、この小さな可憐な菩薩様を眺めているうちに、法起寺に呼ばれている気持ちになったのです。

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コメント 7

yk

法隆寺 、私はブル像より、おお回廊だ、とそちらに注目。薬師寺は赤いのがどうも。
このあたり、11年に行きました。(観光バスです)
こういう風に回りをとりまくのは 回廊ではないけれど。 ビザンチンではあるな、と思いだしています。。
ルーマニアのスチャバの世界遺産になっている教会はこうでしたし、ブルガリアのリラの僧院もそうです。 回りを 僧坊がぐるりと取り囲んで そこに回廊のように廊下がありました。そうして主聖堂はその中にある。形式としては 法隆寺と同じです。大事なお堂を守る、という役目があるのでしょうか。
 中宮寺の弥勒菩薩はいいですね。
短歌、お好きでいらっしゃるのですね。私は短歌レッスンの講座はとっていますが、どこかへ行っても、すぐにそこで詠まれた歌は思い浮かばないのです。 
 
by yk (2014-03-14 21:00) 

yk

タイプミス、はずかしいです。仏像です。ブル像、って何のことだかわかりませんよね。失礼しました。
by yk (2014-03-14 22:47) 

alice

ykさま、 法隆寺の廻廊、確かに素晴らしいですね!格子窓(専門用語は?)や白壁のハーモニー、五重塔や金堂の周りをきっちり取り巻く安定感・・・。東欧の僧院はまだ行ったことがないので、こういう形式とあれば、ぜひ訪れたいです。

短歌は自分ではたしなみませんが、歌人のを読むことは大好きです。奈良の寺院にはあちこちに會津八一 先生の歌碑が立っていて、その時の気持ちにしっくりしました。ブログを書くときに思い出して、歌集から写させていただきました。
by alice (2014-03-16 14:31) 

cachaca

夢殿本尊特別開扉は春と秋だけなんですね。知りませんでした。今週行こうかと思ったのを4月22日頃に変えてよかった(^^)
この救世観音の光背が頭に釘で打ち付けられているというのは見ることができましたか。
by cachaca (2014-03-17 15:36) 

alice

cachacaさま、夢殿は内部には入れなくて、外の小窓から覗いて観るだけなので、遠いです。それで、光背の確認は無理だと思います。また、救世観音は真正面から参拝する仏像として造られているという解説もどこかで読んだような・・・。ここは法隆寺のなかでは一番印象的でした。
ぜひ!秘仏公開の情報をチェックして、お出かけくださいませ。どこのお寺もHPがあるので、便利ですね。
by alice (2014-03-18 12:38) 

cachaca

>外の小窓から覗いて観るだけ
そうでしたか。それは残念。
>救世観音は真正面から参拝する仏像として造られているという解説
それは知っています。拝むという意味ではそれでいいでしょうが、探究心という意味からすると、それでは思考停止になってしまいます。フェノロサの探究心がなかったら、その後の研究も進まなかったでしょうし、今も布にくるまれたままで、みんな畏怖しているだけかもしれないです。
by cachaca (2014-03-20 09:41) 

alice

cachacaさま、>探究心という意味からすると、それでは思考停止になってしまいます
仏像の観方はいろいろですが基本的にはやはり参拝するために造られているので、私の場合は他の美術品とは違って、身は一歩ひいて鑑賞しています。探究心はもちろんありますが、だからといって思考停止とは思いません・・・。見えないものも想像したり、写真集で確認したりで愉しいです。
東大寺二月堂には絶対秘仏という十一面観音があるそうですが、フェノロサも説得したのでしょうか?
by alice (2014-03-20 15:43) 

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