(2-2)ロンドン [2018春イングランドロマネスクとオペラの旅]
~続きです。
前年の1931年秋に50歳になったピカソにとって、1932年は大転換(Make-or-break yaer)の年になりました。彼の展覧会に人々は殺到し、同時に批評家たちは過去よりも未来の芸術家としてピカソを評価するようになります。家庭的にはすでにロシアのバレリーナだったオルガを妻に迎え息子も生まれ、パリの大邸宅でブルジョワ的な暮らしをしていました。しかし、ピカソは本来のボヘミア的な資質からか次第に落ち着かず、批評家にも酷評が目立つようになると、ノルマンディの田舎に18世紀のシャトーを買い、画室とは別に彫刻のための小さなアトリエも造り移住します。しかし一方では家族との生活とは別の秘密裡に若い娘マリー・テレーズとの共同生活を始めます。大きなカンバスに描かれた秘密の恋人だった22歳のマリー・テレーズをモデルに1932にセクシャルな作品を描いています(下に紹介)が横の説明に「~Perhapps after sex」いちいち説明しなくても観ればわかるって(汗)
展示は1932年の1月から順を追ってピカソの画業を紹介するもの(写真も多い)ですが、最後はやはりこのあとのゲルニカの悲劇(1937)や世界大戦へ時代の流れが予測されて・・・ピカソの1932年の世界は永遠に戻ってきませんでした。
20世紀で最も影響力のある芸術家ピカソの1932年に焦点を当てた展覧会はやはりというべきか、私生活とは切り離せないものでした。テレーズにも出会わずあのパリの暮らしに満足したままだったら・・・やはり小ものの画家として終わっていたのかも知れません。
ということで、愛、女、悲劇は哀しみと訳したほうが良いのかも知れません。カタログは購入しませんでした。カメラOK
↓パンフレットの表紙にもなった「夢」(1932.1) 137×97 個人蔵
↓「赤い肘掛椅子の女」(1932.1)130×97 ピカソ美術館蔵
↓「黒い寝椅子の裸婦」(1932.3)162×130 個人蔵
↓詳細不明
↓パリのピカソ美術館から貸し出されていた何点かのうち、正妻のオルガを描いた作品の一部分
↓ランチはテイト・モダンの上階にあるレストランの窓際のカウンター席で。注文してから番号を書いた箆をもらうシステム。それはいいけれどリエットが塩辛すぎて閉口。サーモン・リエットのプレートとロゼワインで11.4£
食事をしている間に雨がとうとう降ってきました。バックファイアー橋を渡り、地下鉄でコヴェントガーデンまで戻りました。今夜のオペラは8時開演です。それまで持参のおせんべいや栗羊羹をいただいて、のんびり過ごしました。
♪~George Benjamin 『LESSONS IN LOVE AND VIOLENCE』@ロイヤル・オペラハウス 20:00~
指揮:George Benjamin
演出:Katie Mitchell
台本:Martin Crimp
King :Stéphane Degout
Isabel :Barbara Hannigan
Gaveston / Stranger :Gyula Orendt
Mortimer :Peter Hoare
Boy 、Later Young King :Samuel Boden
Gaveston / Stranger :Gyula Orendt
Mortimer :Peter Hoare
Boy 、Later Young King :Samuel Boden
Girl :Ocean Barrington-cook
Witness 1 / Singer 1 / Woman 1 :Jennifer France
Witness 2 / Singer 2 / Woman 2 :Krisztina Szabó
Witness 3 / Madman :Andri Björn Róbertsson
Witness 2 / Singer 2 / Woman 2 :Krisztina Szabó
Witness 3 / Madman :Andri Björn Róbertsson
イギリスの著名な劇作家マーティン・クリンプの台本とベンジャミンの作曲の組み合わせは、2012年のエクサンプロヴァンス音楽祭で初演された『Written on Skim』に次ぐ新作オペラで、世界初演です。新作ものは乏しい私のオペラ歴にはほとんど登場していませんが、今回は一度生で聴きたかったソプラノのハン二ガンが王妃役というので、旅の初めに聴くことにしました。チケットの売れ行きはあまり良くなかったようですが、8~9割くらいは埋まっていました。舞台は現代に移されてますが、14世紀プランタジネット朝のエドワード2世からエドワード3世の史実をもとに展開されます。Kingのエドワード2世の同性愛や王妃の不倫など、結構生々しいストーリーですが音楽は意外にモダンな難解さとは違って抒情的。2階の舞台に近いバルコン席にハープなどの楽器が置かれて、その音色がうっとりするほど清冽。舞台上の生々しい王家の争いは「愛と暴力のレッスン」として、子供たちに受け継がれていきます。王妃イザベラのお気に入りだった男の子(後のエドワード3世)へと。ハンニガンは歌唱は勿論のこと、演技の巧さや美しい舞台姿も含めて完璧でした。ドゥグーのキングも容姿やちょっとした仕草が〇〇王子に似ていて、英国王室のおひざ元でこういう出し物って・・・皮肉な演出にも思えましたが。休憩なしの2時間足らずで幕が下りました。音楽があまり主張しない演劇的な作品ですが、新鮮で楽しめました。
↓カーテンコール
↓プログラム
終演後、ホテルの近くのタパス・バーBarrafinaで。パドロン、ソフト蟹のから揚げ、リオハの赤などで40£
雨も上がって、明日は晴れそうです~。
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