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(3-1)パリ [2017冬の旅(パリとチューリッヒ)]

1/27(金)

 パリ3日目の朝、サンミッシェル大通りを眺めながらの朝食を終え 、9時15分からオープンしているミュゼ・クリュニーへ。実は今回の旅はオペラ観劇よりもここで開催されている「メロヴィング朝美術」の特別展が楽しみでした。それでホテルはクリュニー近く(300Mくらい)の宿にしたのです。ミュゼ・クリュニーは現在(2020年まで)大改装中です。クレーンが見え、工事塀がぐるりと廻らされています。

↓木製の塀や天使のイラストもお洒落です。

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↓ 正門を抜けると中庭にテント張りの荷物チェックがありました。9:30頃でしたが、さほど混んでなくスムーズに入館できました。

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ミュゼ・クリュニーに初めて来たのは1994年春、初めての一人旅のときでした。2回目は2002年友人と訪れていますので15年ぶりです。当時お元気だったE子さんとパリに着いた翌日この中庭で写真を撮りあったことなど思い出しました。気の合う友との楽しかった旅の日々を思い出し、しんみり。淋しい気持ちをふりはらうように館内へ進みました。

 ☆MUsèe de Cluny クリュニー美術館(3) 古代ローマ時代の浴場の遺跡を14世紀にクリュニー修道院の院長が購入、城館を建てたのが建物の起源です。19世紀になりコレクターのアレクサンドル・デュ・ソムラーの蒐集品をもとに中世美術専門の美術館として公開されました。雰囲気のある建物ですが傷みもあり、今回の改修でどのように変わるのか楽しみです。

「Les Temps Mè rovingiens メロヴィング朝美術展」2016.10/26~2017.2/13まで 開催

↓図録。重いので帰国後NET注文、ほぼ1週間で届きました。ただ残念ながら私の仏語力では簡単な解説だけ(汗)。

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 メロヴィング朝は5世紀半ばから8世紀半ばに現れたフランク族の最初の王朝です。5世紀後半は民族大移動時代の後期 にあたりますが、次第にメロヴィング王家の覇権も決定的になり、以後8世紀中ごろにカロリング王家に権力が移るまでのほぼ300年、ベルギーのトゥルネイTournaiから北フランス~ケルンそしてフランス全土を支配しました。特にクロヴィスⅠ世(在位481-511)は妃に迎えたクロチルデの影響でキリスト教徒として受洗。508年にはパリ遷都。6世紀にはザクセンを除くドイツ全土とガリアを統一しました。

 愛好するロマネスク以前のキリスト教美術史の流れでは初期キリスト教→民族大移動期→メロヴィング→ランゴバルド→カロリング→プレ・ロマネスクと移行するわけですが、それぞれが重複し、定義的な厳密さを欠きます。メロヴィングの特徴としては北方ゲルマンの独自の造形性、魔的なもの、初元的、呪術的な世界観がみられます。建物はほとんど現存していませんし彫刻もわずかです。展示品はフランス各地からの宝飾工芸品(着衣留め金、ブローチなど)が多く、石碑、浮彫、写本など200点余り。なかでも写本は注目です。こういう特別展には珍しく撮影OK(フラッシュ無し)でしたが、あまり広くない展示室に見学者も多く、カメラを構えるのは難しかったです。

↓「 TrÔne de Dagobert/ダゴベルトの王座」 8世紀末~9世紀?ブロンズ製。ダゴベルトはメロヴィング王朝4代目の王(在位603~639)、王朝最後の強力な王として知られ、創設したサン・ドニ修道院に埋葬されました。

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↓「Autel/祭壇」6世紀~7世紀 カシスの石灰岩製 (カシス市立地中海博物館蔵)

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↓「Tresor de Guarrazar/グアラサールの宝物」の王冠と十字架(7世紀?)19世紀にスペインのトレド県のグアラサールで発見。西ゴートの王レケスウィント(在位?-672)の王冠といわれ、いくつか発見されたものの盗まれたり行方不明になったり。。。これはここミュゼ・クリュニーのコレクション。マドリード国立考古学博物館にも同種のより豪華な宝冠がありました(2009訪問)。

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↓ 「Stele a la croix triomphante/勝利の十字架の石碑」6世紀ごろ(西ゴート王国時代)砂岩製。浮彫がランゴバルトとの共通点も。ナルボンヌの石彫美術館蔵。

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↓ 「Épitaphe de Trasemirus/トラセミルス?の墓名碑」7世紀。砂岩製。19世紀にAude県のMandourelで出土。ナルボンヌ博物館収蔵。プロペラ状のクロスがキュート。

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↓「Base aux larrons/盗賊たちの礎石」7世紀。砂岩製。19世紀にポワチエの郊外にあるデューヌ地下墳墓で発掘され、現在は同市内の洗礼堂に隣接するミュゼ・サント・クロアに収蔵。イエスとともに磔刑にされた盗賊たちの浮彫。上部に柱の欠けた部分。これは超有名な遺物なのでここに出品されているとは!とビックリ。でも同じ美術館にある「サント・ラデグンデの書見台」はさすがに出品されていませんでした。

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↓「Plaque du Broc/Brocの銘板」5~6世紀。Puy-de-Dôme県のBrocで19世紀に発掘。粘土を焼いて鋳造? 兵士の足元に蛇。呪術的で印象的。パリに近いサン・ジェルマン・アン・レイの考古学美術館収蔵 。

 

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↓「Sarcophage de saint Drausin/聖ドラウシウスの石棺」6世紀。大理石製。この時代にしては高度な技法の装飾で彫られています。フランス南西部のAisne県のスワッソンのノートルダム聖堂旧蔵。現在はルーブル美術館に入ってます。

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 ↓展示室の奥はローマ時代の祭室の跡?この特別展の映像が観られるようになっています。ここで一息入れて~

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また展示室へ。ここからは宝飾品や写本などが多くなりますが、ガラスに照明が反射して上手く撮れませんでした。鳥や魚型、幾何学模様のブローチやバックルなど。

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↓「Sacramentarie de Gellone」8世紀末の写本。この後のカロリング朝から写本製作は盛んになりますが、まだ挿絵も控えめで、みずみずしい感じ。南仏のサン・ギレーム・ル・デセールのGellone修道院旧蔵。現在はパリ国立図書館蔵。 

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↓「Disque de Limons/Limonsの浮彫装飾円盤」6世紀末~7世紀初め。直径6.3cm重さ39g。金細工に色石(ガーネット)をあしらった精巧なもの。19世紀にPuy-de-Dôme県のLimonsで発見。十字架の中央に彫られたイエスの顔がアフリカ的、魔術的風貌でびっくり! 6つの放射線状に表れる仮面男たちも怖い・・・。

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↓「Antéfixe de Sées/  Séesの頭部?」6世紀~7世紀 焼かれた粘土板。Orne県のSéesの大聖堂旧蔵。現在はルーブル美術館蔵。15×10.5cmと小型ながらインパクトの強い浮彫。上のディスクとは正反対の表現ながらイエスの苦悩が異形ともいえる原始的な造形。7世紀のガリアとアフリカとの間の相似性を示しています。民族大移動期の共通したモデルがあったものと思われます。

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 小品の宝飾品を含めて200点を超える展示品の数々、興味深いものばかりでした。自分で撮った写真中心にアップしましたが、キリがないのでこの辺で。常設展示品も以前は2度 訪れているのですが気が付かなかったものも多く、素晴らしいコレクションを再認識しつつ巡りました。

続きます~。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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