(3-2)パリ [2017冬の旅(パリとチューリッヒ)]
~続きです。
常設展も3度目とはいえ15年ぶりなので、記憶をたどりつつロマネスクを中心に巡りました。照明を落としたベルギー・タペスリーやゴシックの祭壇の部屋を抜けると
↓アヴィニヨン派の「ピエタ」15世紀。南仏プロヴァンスのタラスコンのシャトー旧蔵
↓階段脇には線刻の彫刻版(詳細不明)がいくつか。
↓ガラス天井の明るい展示室にはノートルダム寺院にあったゴシック彫刻の「奏楽の天使たち」&「人物柱の裳裾部分」
↓ステンドグラス室のなかのロマネスクはごくわずか。上部「聖テモテ」1160頃 Neuwillerにあったもの。下部は 「天国に昇る聖ブノアを見守る2人の修道僧」1140-44 南仏のタラスコンのシャトー旧蔵。
↓スペイン・ロマネスク の柱頭彫刻。「アダムとイヴの物語」12世紀。カタルーニャ北部。
↓「アブラハムの物語」より「ノアの箱舟」。カタルーニャ北部のSant Pere de Rodes修道院旧蔵
↓仮設の階段を上って上階へ。昨日行ったばかりのボーヴェの館にあったタペスリーの部屋。中世には華やかな都だったこと が偲ばれます。写真では見えませんが、下部の木製のベンチ(教会)には庶民の暮らしが生き生きと彫られています。
↓奥の突き当りにゴシックのチャペル が残されています。
↓ 「磔刑図のプレート」エナメルと金細工。1160-70 ドイツのヒルデスハイムにあったもの。
↓「Olifant/中世の象牙の角笛」1100年ころ。モーゼル県Metzの教会旧蔵。精巧な彫が素晴らしい逸品です。
ここまでで4時間ほど。さすがに空腹と疲れでぐったりです・・・サンジェルマン大通りにでて右折、サンタンドレ・デサールの細い路地のイタリアンでランチ。地元のお客さんでほぼ満席の人気店。私は海鮮パスタにしましたが、隣のテーブルを見るとピッツアが美味しそうでした。
↓途中の本屋さんのショーウィンドーに「断捨離」の仏語の本を発見。L'art du rangement・・・片づけの芸術かあ(笑)
ホテルに戻り夕方まで仮眠後、サンミッシェルからオペラ・バスチーユまではホテルの前からバスに乗って行きました。バスチーユ手前のサン・ポールで降車。この近辺を歩くのはひさしぶりです。カナリア諸島へ行く前に寄って以来ですから6年ぶり。朝ごはんを食べに通ったカフェ(右)と八百屋さん(左)は変わっていません。
↓上の写真の突き当りの建物がエコール。第二次大戦時にマレ地区の小学校だったことから、ユダヤ人の子供たちが連れ去られ犠牲になったところです。この向かいのプチホテルに2005年に泊まり、窓から↓のプレートを 発見して気が付きました。
現在もまだまだ平和とは言い難く、IS国のテロがパリ、ニースと続くフランスですが、萎縮せずに普段通りに暮らし、音楽や芸術を愉しむ街 。だからこそ私も一抹の不安はあるけれど、やってきたのです。
↓オペラの前に近くのカフェでフルーツたっぷりのパフェ。。。ですが、日本のパフェより高くて美味しくない・・・。
↓バスチーユ・オペラ座
昨年は無駄にしたチケットが多く、それに懲りて旅に出られそうな確率が高くなってからパリ・オペラのHPをチェックしました。でも、今やオペラ界の超スパースターになってしまったカウフマンの公演ですから、すでに完売。しばらくしてまたのぞいてみると、たまたま最近は彼のキャンセルが多かったせいで、戻り券を1枚発見!即ゲットしました。入り口は金属探知機や荷物チェックなどあって、やや物々しい雰囲気ですが、中に入るといつもの華やかな劇場風景です。気のせいか女性が多いみたい・・・。第2カテゴリー204€ですが、平土間中段右寄り通路側。
♪~ ワーグナー『Lohengrin/ローエングリン』19:00開演
Conductor:Philippe Jordan
Director:Claus Guth
Heinrich der Vogler:René Pape
Lohengrin:Jonas Kaufmann
Elsa von Brabant:Martina Serafin Edith Haller
Friedrich von Telramund:Wolfgang Koch
Ortrud:Evelyn Herlitzius
Orchestre et Choeurs de l’Opéra national de Paris
カウフマンがキャンセルしないで歌ってくれる~という熱いファンたちの期待感でいっぱいの中、幕が上がりました。序曲が始まりましたが・・・あれっ?ドイツ的でないソフトな演奏にワーグナーらしくなくてがっかり。演出は苦手なグースですが、今回は特に可もなく不可もなく、城と木々と湖をなんとなく配した舞台です。カウフマンは白鳥のように体を丸めて登場し、素敵~!と思わず拍手しそうになって(笑)。パーペは昨年のベルリンで聴いたグルネマンツに比べると重厚さは抑え気味、カウフマンに至っては復帰後のため試運転?と思えるほどの歌唱が続き、演技でカバー。私自身は昼寝もしてて、体調充分だったにもかかわらず、ついウトウト(カウフマンが歌っているのに!)。。。エルザのSerafinに代わったHaller(2月からの公演で歌う)も頑張って歌い、Herlitzius もマイヤーにはかないませんがヒステリックな表現が合っています。そしてようやく婚礼の場面から盛り上がってきて、ローエングリンが素性を明かし去ってゆく場面のカウフマンのアリアがとても彼らしい歌唱で、素敵でした。しかし、終わってみればいつものワーグナーを聴いたという高揚感には乏しく、少々がっかり。やはりワーグナーはバレンボイムやティーレマンで聴きたいと改めて思いました。
↓カーテンコールの写真は顔が白くなって失敗
メトロでホテルへ。途中乗り換えたシャトレ駅の通路で検問があり、パスポートの提示。パスポートは部屋の金庫に置いてくるときもあるので、ひやっとしました。このご時世では常時携帯するほうが良さそうです。5年ぶりのパリでしたが3泊しただけで、お別れ。明日はチューリッヒへ向かいます。
私も同じ25日にパリ入りし、27日の公演を見ましたので、どういう感想を持たれたかコメントを楽しみにしておりました。
確かにカウフマン、試運転風の歌唱という印象でした。ところでこの日のエルザですが、数日間体調をくずしたSerafinの代わりに最後の方の公演にキャスティングされているEdith Hallerが歌ったようです。
それにしても到着早々でClunyをしっかり4時間も見学後に、昼寝をされたとしても、LOHENGRINを見られるとはスゴイ!!
パスポートチェックの件もビックリしました。アラブ・アフリカ系列の人がチェックされている光景は日常茶飯事ですが(あれじゃイヤになるだろう
な…と思えるくらい)日本人相手では見たことも、経験したこともありませんでした。やっぱりコピーでも、持って歩こうと思った次第です。
by お散歩犬 (2017-02-25 15:42)
お散歩犬さんも同日パリに入られたのですか!「ローエングリン」もご覧になられたとのこと、劇場ですれ違っていたのかも知れませんね。エルザが代役だったとは、アナウンスがあったと思うのですが、まったく気が付きませんでした。ご指摘ありがとうございました。早速訂正させていただきます。
by alice (2017-03-01 09:47)
Alice様
私のBlog(『ピレネーの南』)にコメントを頂いていることに気づき、早速「てるてる坊主のオペラと美術の旅」を拝見いたしましたところ、「Cluny美術館でカタルーニャ北部のSant Pere de Rodes修道院の柱頭彫刻(「ノアの箱舟」)をご覧になった」との記事に驚いてしまいました。
ご存知かと思いますが、Sant Pere de Rodesはたいへん由緒ある大修道院(跡)ですが、40個をこえる回廊の柱頭彫刻がほとんど散逸してしまい、スペインでもめったにお目にかかれぬ状態にあります。Clunyが19世紀から、Rodesの柱頭彫刻をいくつも蒐集していることはよく知られておりますが、カタログを見るとこの作品は「2014年ドイツより取得」となっており、ごく最近追加されたもののようで、大事な情報に感謝しております。日本語でもロマネスク関連のBlog記事があることに気づきましたので、今後とも目配りをさせていただく所存です。中原英二
by 中原英二 (2017-06-18 11:12)
中原さま こんにちは!お越しいただきありがとうございます。 「ピレネーの南」にコメントさせていただいたのは2012年冬にソリアに行った後だったと思います。ソリアのパラドールにANTONIO MACHADOの名があり、検索してスペイン内戦のことなど読ませていただきました。今、当時の私の記事を確認したところ
http://alice2005.blog.so-net.ne.jp/2012-02-27
に中原さまのURLも貼らせていただいておりました。
中原さまがロマネスク行脚されていることは、そういうわけで偶然知ったことになります。なにか不思議な縁を感じました。
上記のミュゼ・クリュニーの「ノアの箱舟」の上の写真「楽園追放」も確定ではないのかもしれませんがSant Pere de Rodes修道院の柱頭彫刻のようですね。
なお、Sant Pere de Rodes修道院へは割合近くまで(ポルト・リガ)行ったのですが、ツアーだったので断念。今以って心残りでおります。
by alice (2017-06-24 16:37)
Alice様
Cluny美術館でご覧になった柱頭彫刻のBlog記事を拝読したのがきっかけで、私もSant Pere de Rodes修道院についての写真や資料を見直す機会があり、久しぶりで「ピレネーの南」のBlogを更新いたしました。その中で、『(3-2)パリ [2017冬の旅(パリとチューリッヒ)』の記事に触発された旨、ご紹介させていただきました。
「アダムとイブの物語」の柱頭彫刻は、Rodesの回廊のものだと推測いたします。Sant Pere de Rodesは謎の多い修道院で、まことにふしぎなご縁かとつくづく思います。なお先日はまちがって同じコメントを再送してしまい、お騒がせしました。中原
by 中原英二 (2017-06-27 10:54)