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十一面観音巡りの旅(5)秋の大和路 [2013秋の奈良(法華寺・秋篠寺・法隆寺他)]

 春の旅に続き、秋の大和路を歩きました。まず、札幌から名古屋に飛び、ウィーンフィルを聴いた後、名古屋駅前のビジネスホテルに1泊。翌朝名古屋から新幹線で京都、そして近鉄で奈良に向かいました。朝から晴れあがった良い天気です。春以来の大和路の風景を楽しみながら、これからのスケジュールを考えてました。そして、今日が金曜日で、明日は土曜日なので、薬師寺は混みそうです。今日のうちに水煙を見学することにしました。奈良の手前の近鉄西大寺駅であたふたと降車。駅構内のロッカーに荷物を押し込み、電車を乗り換えて西ノ京へ向かいました。

↓ 西ノ京駅を出るとすぐ薬師寺への道があり、

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☆ 薬師寺

↓ 広大な境内にいくつかの伽藍が建っています。

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↓特別展「東塔水煙降臨展」は境内の片隅にある倉庫のようなところで開催中。

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 実は飛天に興味を持ったのはそう古いことではありません。フランスの古都ポアチエを1999に訪れたときでした。なぜかサン・ジャン洗礼堂の壁に描かれた飛翔する天使に魅かれました。シリアのパルミラ博物館で観た浮き彫りの天使、新疆ウイグルの千仏洞の散華する飛天、そして未見だったここ薬師寺の水煙に透かし彫りされた飛天とつながっていくのです。遥かなるシルクロード、民族と文化の交差する中で産まれ、伝えられ、日本の美意識に高められた美しい遺産です。61年ぶりに公開されたという4面に左右対称に造形された天人たち。特に上部のまっさかさまに降りてくる飛天が魅力的です。

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 体育館のような大きな展示会場には他にも貴重な仏像がいくつか並べられていましたが、飛天に魅せられた私の足は自然に水煙に舞い戻ってしまいます。そのうち薬師寺のお坊さんのガイドが始まりました。ユーモアたっぷりの解説に拍手でした。水煙は落雷などの火災から五重塔を守るためのものですが、現代ではパソコンのお守りでもあり・・・炎上を防ぐために、館内の売店にはミニチュアも売ってますから・・・って。お話も商売も巧みなのは故高田好胤師譲りでしょうか(笑)。

 「凍れる音楽」と賞された水煙をまじかに鑑賞した後は境内に点在する伽藍めぐりです。61年ぶりにオリジナルの水煙が公開されたのは東塔の解体修理が始まったからなのです。完成がいつごろになるかは不明ですが、莫大な費用のねん出のためもあり特別公開されたのです。生きているうちに再びこんな近くで観ることはかなわないでしょう。なお制作時期は、飛鳥時代後半(白鳳期)とされています。重いカタログは手が出ませんでしたが、この展覧会のための小冊子を購入しました。水煙全体の構造や解説とても分かりやすく説明されています。

また、歌碑もありましたが、水煙を歌った作品を紹介されていただきます。東塔の頂にあると想像して・・・

すゐえんの あまつをとめが ころもでの
ひまにもすめる あきのそらかな   會津八一 

秋の青空と飛天たち・・・これほど美しい情景があるでしょうか。

↓でも現実の東塔は仮設の建物に覆われた姿(右)。その向き合うように昭和56年に復興された西塔(左)を南門から写しました。

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↓ 回廊からの西塔の眺め

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 次は国宝の東院堂へ。 創建されたのは養老年間(717~724)とのことですが、973の火災で焼失。現在の建物は正面7間、側面4間の入母屋造本瓦葺で、1285に南向きで再建されましたが、1733に西向きに変えられました。堂内では丁度お坊さんたちの礼拝の時間でした。ここには「聖観音菩薩立像」(白鳳時代/国宝)というとびっきりの美仏が祀られています。カメラは禁止で近くから撮影できませんので、お堂の外から写しました。聖観世音菩薩は日本屈指のお美しいお姿の観音さまといわれ、薄い衣を召し、その衣の美しい襞の流れの下からおみ足が透けて見える彫刻法は、インドのグプタ王朝の影響を受けたものだそうです。均整のとれたスタイルに金色の光背も華やかな観音様です。黒っぽい艶のある色(古銅色)も印象的でした。

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次は金堂へ。
昭和51年(1976)4月に白鳳時代様式の本格的な金堂として復興しました。ここには国宝の薬師三尊像 【国宝】 白鳳時代があります。金堂内の白大理石須弥檀[しゅみだん]上に、中央に薬師瑠璃光如来、向かって右に日光菩薩[にっこうぼさつ]、向かって左に月光菩薩[がっこうぼさつ]がお祀りされています。

ここでは薬師三尊像のほかにも大切な見どころがありました。薬師如来台座 【国宝】 白鳳時代です。説明に寄りますとこの台座には「奈良時代における世界の文様が集約されています。一番上の框[かまち]にはギリシャの葡萄唐草文様[ぶどうからくさもんよう]、その下にはペルシャの蓮華文様[れんげもんよう]が見られます。各面の中央には、インドから伝わった力神(蕃人[ばんじん])の裸像が浮彫りされています。さらに、下框には、中国の四方四神(東に青龍[せいりゅう]、南に朱雀[しゅじゃく]、西に白虎[びゃっこ]、北に玄武[げんぶ])の彫刻がなされています。正にシルクロードが奈良まで続いていたのです。」とのこと。

次は大講堂へ。↓金堂から眺めた大講堂です。

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金堂よりも大きく昭和に西塔や回廊とともに再建されました。元は南都仏教が教学を重んじ講堂に大勢の学僧が参集して経典を講讃するための建物でした。
ここには弥勒三尊像 【重要文化財】 白鳳~天平時代があります。

薬師寺のお宝仏像の数々に眼がくらみそうになりながら、務めて心静かにお参りした後はご朱印をいただきました。薬師寺だけで水煙をはじめ3枚ものご朱印コレクションにんまり。

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別料金がかかりましたが、玄奘三蔵特別展や平山郁夫画伯の壁画も見学しました。「平成12年(2000)12月31日に平山郁夫画伯が入魂された、玄奘三蔵求法の旅をたどる「大唐西域壁画」は、玄奘塔北側にある大唐西域壁画殿にお祀りしています」 とのこと。欠かすわけには行きません。新疆ウイグルを旅したときに玄奘三蔵の歩いた遺跡をいくつか回ったこと。あの砂漠の茫漠とした風景が蘇ってきました。

 薬師寺だけで3時間はかかりました。唐招提寺はあきらめて西ノ京から西大寺駅へ。↓遅くなった昼食は駅構内の簡易食堂で

↓650円のハヤシライス。ご飯が五穀米で美味しくて、ヘルシー。

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夜に備えて節約節約とつぶやきながら。。。近鉄奈良駅へ。



 


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コメント 7

cachaca

aliceさんは奈良にも行っておられたんですね。私は今、古事記と日本書紀にハマってまして(^^; 春に伊勢神宮のほうから法隆寺へ行こうと思っています。法隆寺の救世観音は聖徳太子ではなく藤原入鹿ではという説もあるらしい。
この辺りは車があったほうが回りやすそうですね。
by cachaca (2014-03-02 18:34) 

cachaca

すみません。蘇我入鹿 の間違いです。無知さ加減がすぐわかる(^0^)
by cachaca (2014-03-02 18:40) 

alice

cachacaさま、古事記と日本書紀については私のほうが無知です。この辺りを歩くには必須なのですが・・・。
法隆寺は修学旅行以来の再訪でしたが、高校生の時の記憶がほとんどなく、全く未知なところに踏み込んだ気持ちでした。半日では見きれませんでしたので、もう少し、知識を仕入れてから行こうと思っています。

>この辺りは車があったほうが回りやすそうですね
もちろんです~!あまり注意してみてませんが、ほとんどのお寺は駐車場があったみたいです。

一応、テーマは「十一面観音巡り」ですが、他の寺社や仏像も折々に立ち寄ります。この後、秋の法隆寺もアップします。
by alice (2014-03-02 22:43) 

alice

昨日からブログの記事が書けなくなったり、投稿が反映されなくなり、トラブルが続いています。

この記事も、どういう理由か分かりませんが、自分のパソコン上には通常の反映がされず、カレンダーから日にちを選ぶと画面に現れ、それを見ているという変なことになって…困っています。

早く復旧しますように。
by alice (2014-03-02 23:19) 

yk

奈良の旅 懐かしく拝見しました。
聖林寺、長谷寺、室生寺、など、8年くらい前に行きました。ちょうどイランに行ったあとです。イランに行く前に 松本清張の『火の路』(その昔の朝日新聞では『火の回路』となっていた)を読み 飛鳥の酒船石が出てくるので それをみたくて行ったのですが、さすがaliceさん、個人旅行ですね。私は学生時代に奈良に行ったとき、野道を歩き、長いこと電車、バスを待った記憶がよみがえり朝日旅行で行ったのです。それでも 室生寺や 長谷寺など階段を上がらなければならないのは同じですが、、。11月、紅葉の時期でしたが、室生寺の紅葉はみごとでしたが他は今一つの時期でした。 桜のころのいい季節にいらっしゃいましたね。
 でも私は やはり 仏像にはなじめません。 例外は飛鳥寺です。 でもそれ以上に心ひかれたのは二面石、など 面白い彫刻(というほど大げさではありませんが)酒船石も謎です。でもロマンをかんじました。
 秋の旅も楽しませていただいております。
これは聖林寺のところに書いたのですが何回試みても コメント送信失敗がでてしまうので、こちらにおくってみます。
by yk (2014-03-03 11:26) 

yk

すみません、今見ると聖林寺のページに反映されていました。
薬師寺は 4年くらい前でしたか。 法隆寺、とか遠そう、 面倒で 現地發の観光バスにのってしまいました。でもそれぞれの場所で思ったより十分時間もとってくれていて、説明もあり、窮屈さはかんじませんでしたが、お食事は 大広間で風情なしでした。でもね、ホテルはおごって奈良ホテル。
by yk (2014-03-03 11:49) 

alice

ykさま、2,3日前からブログの編集ができなくなったり、コメントが反映されるのが遅れたり、トラぶっています。昨日はメールでso-netにそのことを報告したのですが、まだ返事がきません。
これは私のところだけの問題ではないと思うのですが・・・。
このまま続くようであれば、他に引越ししなければならないので、面倒なことです。so-netって親会社がソニーなのですが、屋台骨がゆらいでいるとか?

法隆寺は今回訪れて、世界に誇る文化遺産であることをいまさらながら認識。それから法隆寺に関する本を図書館から借りて読んでいます。今日は「飛鳥白鳳天平仏」久野健著を借りてきました。仏像の様式がどこからきてどうなっているのかなど興味深いです。

飛鳥寺に行ったのは15年くらい前だったかしら…今のように日記やブログに記録しておけばよかったのですが・・・。
by alice (2014-03-03 22:33) 

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